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| 2019/05/17 15:55|日本の映像作品|TB:0|CM:58|▲
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今回は、以前から頂いていたリクエストにお応えして、伊丹十三監督作品「タンポポ」(1985年)の海外レビューを翻訳しました。
自分の店で美味しいラーメンを出そうと奮闘する女性店主タンポポの姿を描いたこの映画、海外での影響力はなかなか強かったようで、この作品をきっかけに日本文化を学ぶようになった人もいれば、アイバンラーメンの店主のように、ラーメン店を開業するまでになった人もいます。当ブログでは海外のラーメン店レビューをよく翻訳していますが、ここでも「タンポポ」の影響がうかがえるコメントはよく見かけますよ。
今回は映画批評サイト「IMDb」に投稿されたタンポポのレビュー(投票数:13,277件、平均点:10点満点中7.9点)を翻訳しました。
↓では、レビュー翻訳をどうぞ。
※ 6/7 訂正:次回更新日時を6月7日から未定に変更しました。
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● 「最高だよ!」 評価:★★★★★★★★★★
驚くほど素晴らしい作品だった。僕は映画学校の生徒だからかなり多くの映画を鑑賞してきたけれど、この映画は最高だ。みんなが笑うオースティン・パワーズのユーモアなんて、この映画のユーモアに比べれば存在しないも同然だと思う。
僕のように奇妙なユーモアのセンスを持つ人ならば、この映画は大好きになるはずだ。スパゲティ・ウェスタン(マカロニ・ウェスタン)の偉大なパロディで、行き当たりばったりに展開していく感覚が実に楽しい。
僕は初めてデートする相手にこの映画を観せることにしている。相手が頭の古いタイプかどうかをチェックしたい時にうってつけの映画だということは保証するよ。映画の最初の頃には、みんなある程度笑ってくれる。でも、映画が終わる頃には、意味が分からずポカンとしているか、あるいは満面の笑みを見せてくれるか、キレイに分かれるからね。 そろそろ、これがどんな映画か確認したくなってきたんじゃないかな?どうか、この映画を手に入れてもらいたい。そして「最高の作品の目撃者」の一員に加わってもらいたい。過去最高の作品とまで言えるかどうかはともかく、比較的最近観た中で最高に面白かったことは間違いないからね。

● 「ハリウッドの誇大広告を信じられない理由のひとつ」 評価:★★★★★★★★★★
まさに魔法だ!最初の一コマから最後の一コマまで、この映画はほとんどの人が忘れかけていた場所にあなたを連れて行ってくれるだろう。そこには現実感のこもった本物の言葉と本物の興奮があり、生の本質、そして死の本質があるのだ!物語は生命の根源としての「食」と共に描かれている。
ストーリーは、「窮地に陥った乙女を救うためにやってきたヒーロー」というベーシックなテーマを中心に展開してくのだが、そこからいくつか枝分かれしていく。その先では賢明な教えを聞けたり、実に奇妙な感覚を味わえたり、なんの意味を持つのかさっぱり分からないシーンに遭遇したりもする。しかし、トータルでは実に味わい深く、満足感の高い映画体験ができるというわけだ。 全体を通して貫かれているのは日本とヨーロッパへの食文化や欧米の映画スタイルに対する尊敬、そして、3回か4回、あるいは5回観て初めて意味がわかるジョークにあふれていることだ。レンタルして観るだけではなくて、所有すべき映画だと思う。もちろん、デートムービーとしても素晴らしいし、仲の良い友だちと一緒に鑑賞して語り合うのにも良いだろう。
ただし、これはディズニー映画じゃないということには気をつけてほしい。つまり、この映画には悲劇も描かれている。家族のために最後の食事を作った後、命を落とす若い母親が出てくるシーンがある。取り乱した彼女の夫は子どもたちに「母ちゃんが作った最後のご飯だ。まだ温かいうちに食べろ!」と食べながら怒鳴るのだ。ここは妙に記憶に残るシーンだった。他にも色々なユーモアも散りばめられているが、ここでネタをばらして台無しにするつもりはない。これはまだまだ命を持っている映画なのだ。
誰であれ、この映画を鑑賞した人は、必ず自分のお気に入りリストに入れてしまうだろう。もっと幅広く知られてほしいものだ。私がこの映画を最初に観たのはイギリスのテレビで、恐らく80年代後半頃だったと思う。この作品にすっかり魅了されてしまった私は、当時、どうにか手に入れようとしたものだが、どこからも手に入れることはできず、結局は諦めてしまった。この映画を観た人はいないかと、ずいぶんたくさんの人たちに聞いてまわったりもしたものだが、私の周囲には誰もそんな人はいなかった。 そんなわけだから、ずいぶん後になってから、ネットで中国製の怪しいDVDを見つけた時は、モラルを放り投げて購入してしまったものだ。正直なところ、嬉しかった。そうやって手に入れたタンポポのDVDを友人に貸してあげたところ、「フxxク!こんな映画が一体、今までどこに隠れてたんだ?最高じゃないか」という反応が返ってきた。
言うまでもなく、これは彼の言葉であって、私のものではない。

● 「なんという傑作だ!」 評価:★★★★★★★★★★
1993年に地元のレンタルショップで借りてきて以来、数え切れないほど何度も、この驚くべき作品を鑑賞したものだ。この作品は偉大なレシピとも言える。このレシピを自分のものにするためにも、何度も繰り返し観て頂きたい。
私は観るたびに新たな面白さに気付かされる。年齢を重ねるごとに(同時に賢くもなっていると思いたいが)、楽しさが増してくる作品なのだ。ゴージャスで官能的で名人芸のようにも感じられる作品で、傑作のひとつであることは明らかだ。フリッツ・ラングやキューブリックの作品と同じジャンルと見なされることはないだろうが、傑作としての手触りに関しては、近いものを感じる。
なぜ、このピュアな作品がこれほど心に残るのか、理由をいろいろ考えていくと一晩は費やしてしまうだろう。ただ、この映画を味わうためには、別にそこまで難しく考える必要はない。基本的には生と死、そして進行中の恋愛と料理を描いた作品だ。この映画を観るまで、日本人の中に美食という価値観があるとは思いもしなかった。だが、実際には我々西洋人をはるかに上回るほどの哲学があったのだ。 また、この作品では我々の傲慢な人間の社会をいろいろな角度から切り取って、実に面白く心に触れる形で見せてくれる。こうした点においては、比較できる他の作品が見当たらないほどのものであり、まるで人間のあらゆる特質を記した百科事典のようだ。あえて近い作品を挙げるとすれば1973年の「最後の晩餐」に、いくつかの点では似ているかもしれない。しかし、「タンポポ」の方がはるかに深い。そして何より、「タンポポ」の方がずっと楽しいのだ! 一本の作品の中でこれほど多様な人間性を見せてくれて、なおかつ、観るたびに楽しい気分にさせてくれるというのは、実に驚くべきことだ。脚本も監督も編集もすべて素晴らしい。撮影も完璧だ。だが、くれぐれも、シリアスで退屈な映画ではなく、笑いを誘う面白い映画であることをお忘れなく…。また、少々クレイジーでもある。そして、この映画を観た後、ラーメンを見る目がそれまでとまるで変わってしまったことにも気づくだろう。
さあ、どうぞ「召し上がれ!」

● 「これまでで一番好きな映画です!」 評価:★★★★★★★★★★
私はこの作品を繰り返し何度も鑑賞したものです。
どうしてかって?正確に説明することは難しいですね。確かに演技は素晴らしいし、ストーリーだってすごく良いのですが、「タンポポ」をこれほど特別な作品にしているのは定義が難しい「何か」です。私としては、その「何か」は作品で一貫して表現されている楽観主義であると解釈したいところですね。つまり、「この世界で暮らす人々には、他の人々のために良いことをしてあげる親切さがまだあるんだ。」と信じさせてくれる作品なのです。 もしかすると、予想外のロマンスにも心惹かれるところがあるかもしれません。もちろん、これは食べ物がテーマの映画ではありますが、より重要なテーマは、むしろ人間です。人々が共に働き、共に食べ、共に努力して、共に何かを達成するという映画なのです。 脚本は完璧です。すべてのシーンは次のシーンに溶け込むように展開していき、あなたを新しい場所へ案内してくれます。物語は時々脇道にそれて、前衛的かつ楽しいシーンにも導いてくれます。
「タンポポ」は個人レベルのとてもささやかな冒険を描いた映画です。私が観たこれまでの数々の映画とは別物で、とてもチャーミングな映画です。一度鑑賞してみる値打ちは十分にありますよ。

● 「独創的で日本的なバカバカしさあふれる楽しい映画」 評価:★★★★★★★★★☆
主人公たちが次から次へと困難に直面し、それを克服していくという楽しい映画だ。そこには日本映画に典型的な要素もあるし、伊丹映画特有の親しみやすさもある。
主人公タンポポと彼女の先生は完璧なラーメン作りを探求している。それは喜劇的でもあり、いくら日本人とはいえ、少々やりすぎでもある。しかし、それと同時に、この作品は日本人の姿を描いた美しい肖像画でもあると感じた。人生のいろいろな局面において完璧を追い求めようとする日本人の姿、それは恐らく、我々西洋人に完全には理解できないものなのだろう。
もちろん、料理作りを極めた人は西洋にも存在する。しかし、料理の分野における完璧さに対しての尊敬が、社会に広く定着しているとまでは言えない。TV番組にしても、料理の作り方を解説するハウトゥーものの番組はあるが、「料理の鉄人」のようにシェフをヒーローとして扱う番組は日本から来るのを待たなければならなかったではないか。 伊丹の妻である宮本信子は、「タンポポ」ではひたむきなヒロインを演じている。興味深いのは、4~5人の男性エキスパートたちの助けがあって、初めて彼女が成功に到達するという物語になっていることだ。それが性差別かどうかは分からない。私としては、彼女が伊丹の他の作品でどんなふうにヒロインを演じているのか、それもぜひ観てみたい。

● 「すすれ!楽しいぞ。」 評価:★★★★★★★★☆☆
アジアでも西洋でも、シニカルで暗い作品や退屈で自己陶酔的な作品が多い中、タンポポは実に楽しく鑑賞できる傑作だ。この作品の監督は人間性というものに対して思い違いをすることなく、温かさと共感をもって人間を見つめている。また、バカになることなく人を楽しませ、横柄にならずに深遠さを表現でき、憂鬱になること無くシリアスなテーマを扱える手腕も持っている。
タンポポは実に独創的であるため、安易にジャンル分けされることを拒否する作品だ。心を打つが実に愉快でもあり、同時に悲しくもある。決して言葉でくどくど説明したりすることはないが、哲学的な深みがある。ただし、それは完璧な麺のように、じつに繊細な味わいとして表現されているのだ。 主人公たちは成熟した大人で、誰もがそれぞれの人生で負った気持ちの擦り傷の痛みを抱えている。観客は彼らの悲しみと同時に、ささやかな達成から得たほのかな喜びを味わえるのだ。シンプルなストーリーは、この映画にとって重要なポイントではない。キャラクターたちの関わりあいと、それがどのように発展していくか、これこそがこの映画の本当の中身だ。少々誇張気味だが独自の世界観を持つコメディ要素にも存在感がある。 サイドストーリーも豊富で、ガールフレンドの前で殺害される悪党、店内の食べ物を指で押して回り、店主を怒らせる高齢の女性など、暴力から笑いまで様々な要素を含んでいる。タンポポは観客にとっての素晴らしい喜びであると同時に、新鮮で独特な視点を提供してくれた作品だ。そして、きっとあなたを空腹にしてくれる作品でもあることだろう。 (翻訳終わり)
申し訳ありませんが、次回の更新は 未定です。確定次第、またご報告させて頂きますね。
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