2011年9月10日

久しぶりに、ジブリ映画の米アマゾン・レビューの翻訳をやってみました。今回は「となりのトトロ」です。 レビュー総数は、これまで翻訳した作品の中で最多の711、レビュアーがつけた点数の平均は5点満点の4.5となっており、北米においても人気、評価共に高いようですね。

翻訳元: Amazon.com なお、少々ネタバレを含んでますので、映画未見の方はご注意下さい。
↓以下に海外からの書き込みを翻訳してお伝えします。
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● 「子供も親も魔法にかけられてしまう作品」 女性 (カリフォルニア州 コロナド) 評価:★★★★★
何年も前になりますが、私は交換留学生として日本に行き、そこでトトロを観て大好きになったんです。そんなわけで、2歳と4歳になる娘のためのDVDを探していた時、迷わずトトロを買いました。トトロは子供達をとりこにしてしまう作品ですが、娘たちの横に座って観ていた私も夫も、トトロの魔法にかけられてしまいます。普通の子供向け作品では、なかなか大人が楽しむ事はできないものですけどね。
私の4歳の娘は、まだ映画を観るには幼すぎて、ディズニーの映画を見せても、たいていは怖がってしまいます。ただ、トトロを見せた時は反応が違いました。娘たちは、メイがトトロの胸に乗るシーンと猫バスのシーンが大好きですし、トトロと姉妹がドングリの芽を出させようと頑張るシーンでは、娘たちも同じように2人並んで頑張っています。作中で、サツキとメイのお母さんがずっと入院している事を娘たちが悲しむかなと心配しましたけど、それは全然問題ありませんでした。 あと、子供達の親という立場から見ると、お姉さんのサツキがみんなのためにお弁当を作ってあげたり、バス停でメイをおんぶしたりと、妹やお父さんの面倒を見てあげているシーンは素晴らしいですね。映画を見終わると、上の娘は毎回、「サツキみたいになる」と言い出して家の手伝いをしてくれたり、妹の面倒をみたりしてくれます。あと、我が家ではプレゼント用としても、何度もこのDVDを買いましたよ。
● 「宮崎監督におじぎしましょう」(カリフォルニア州 カーソン) 評価:★★★★★
個人的意見ですが、アニメーションのファンなら、宮崎監督には敬意を払わなければならないと思っています。アニメファンに限らず、映画や芸術の愛好家なら彼に敬意を表して当然でしょう。私も、過去に「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」、「ハウルの動く城」を観て、畏敬の念に打たれたものでした。
この人物は天才で、今も精力的に作品を作り続けています。宮崎監督の描くイメージは、職人としての技と魂の深い部分が溶け合ったもので、際だって注目に値するものです。彼のファンとなった私は、彼の作品にのめり込んでいくうちに、過去の作品も鑑賞し始めたのですが、その最初の作品が、1988年に公開された、この「となりのトトロ」でした。言うまでもない事でしょうが、この作品も大いに楽しめるものでした。
もちろん、すでに多くの人々が「となりのトトロ」を傑作だと考えていますし、誰もそれに異論はないでしょう。より壮大なスケールを持つ、彼の他の作品に比べれば、親しみやすいスケールの作品ですし、同時に最高のファミリー映画になっています。家族間の関係を表現した映像作品としても素晴らしいものです。特に、2人の姉妹の間柄は微笑ましく、清々しい喜びをもたらしてくれるものです。 また、彼女たちの父親が不在でないのも良い点だと感じました。たいていのアメリカの家族映画では、父親が忙しくて家族と仲が良くなかったり、子供を疑いがちであったりするのですが、本作の父親はそうでないところも好ましい点に思えます。
妹のメイがトトロに出会った事を話した時も、お父さんは軽々しくはねつけたりはしません。ちゃんと話を聞いて説明してあげます。それも、上から見下ろすような話し方ではありません。姉妹が「まっくろくろすけ」に出会った時も同じです。カッコいいお父さんだと思わされます。 これは、悪役も登場しなければ、暴力も出てこないという珍しい映画です。宮崎監督は超自然的な世界を、身震いさせるようなものではなく、楽しく微笑ましい、善意あふれるものとして表現しています。ただ、その代わりに、少女の感じる恐怖が描かれています。それは病気の母親が元気にならないんじゃないだろうか、死んでしまうんじゃないだろうかという、子供達にとっての本当の恐怖です。キャラクターが細部までこだわって作られているおかげで、映画を観ている私たちにとっても、彼女の恐怖は、私たち自身のものであるかのように感じらてくるのです。 ビジュアル的にも技術的にも、そして感情の表現においても、「となりのトトロ」は美しい作品です。ただ、宮崎監督が脚本を書き、監督し、自ら絵を描いた映画なのですから、驚くべき事ではないでしょう。この映画は物語の進行を急いだりしませんし、急展開もありません。しかし、心を奪われるような純粋さがあります。 ここでもう一度、宮崎監督の作品細部へのこだわりに敬意を表したいと思います。そのおかげで、多くの日本文化を学ぶ事ができますから。具体的に言えば、日本の農業が日々どのように営まれているか、あるいは農民たちの見せる環境への一体感などです。 この映画においても、これまでの作品と同様、宮崎監督は彼の産み出す創造物に、自然への感謝と敬意を表現させます。そして、自然は森の精であるトトロという形をもって、そのお返しをしてくれるというわけです。それに、トトロ自身の見せる喜びの表情にも注目すべきものがありますよ。午後のお昼寝もそうですし、傘に落ちる雨粒に大喜びする所などは私たちにも覚えがあるものですしね。 映画を見終わった後で一つ気になるのは、今後、サツキとメイはもうトトロに会えなくなってしまうんじゃないか?という事です。でも、スタジオジブリは「メイとこねこバス」(ジブリ美術館でのみ公開)という13分の作品を作りました。少なくとも、メイは別世界の友人と再び会う事が出来たようです。私たちにも見せてもらえればいいんですけどね。 私にはうまく説明できないんですが、この映画で一番素晴らしいのは、人間性に対する宮崎監督の洞察力だと思います。この映画には魅力的な生き物が登場するか?と聞かれれば、答えはイエスです。魅力的なシーンもたくさんあります。でも、私が一番魅力を感じたのは、ケンカすることがあっても、結局はお互いを大切に思うサツキとメイ、彼女たち姉妹の関わり方でした。 サツキとメイは好きにならずにいられない素晴らしいキャラクターです。自分の事は何でも自分で出来て、心優しいサツキ。トウモロコシがお母さんの病気を治すと信じている、かわいい頑固者のメイ。暖かくて風変わりで素敵な「となりのトトロ」を若い人たち、気持ちの若い人たち、今、落ち込んでる最中の人にもお勧めします。どうか観て下さい。私もすっかりトトロにとりつかれてしまっています。部屋には、ニヤリと笑った猫バスであふれてるんですから!
● 「20世紀中頃の真の日本文化」 (フロリダ) 評価:★★★★★
私はこのアニメを愛している。ディズニーから出る日本語版も心待ちにしていた。私は1960年代の前半、子供だった頃、日本に住んでいていたのだが、その時に見ていた日本の姿が、この映画の中にはたくさんあふれているのだ。親子が一緒に風呂に入るシーンについて心配していたレビュアーがいたが、私はこれを実際に経験した事がある。もちろん、なんの問題もない。祖父や祖母、時には両親とも風呂に入った。
それはただ、変に気取ったところがないというだけの事だ。だから、私はトトロの入浴シーンを見た時、心配する事も動揺する事もなく、むしろ懐かしく暖かい思い出がよみがえってきたものだ。あの当時は普通の事で、何もおかしな事はない。 そして、その頃の日本は、本当にトトロの背景で描かれたような場所だったのだ。作品中のおばあさんが着ていたようなエプロンは、私の祖母も料理をする時に着ていたものだ。私はよく、自分の子供時代と昔の日本を思い出すためだけに、この映画を観る事にしている。 子供だった頃の私の喜び、そして心の痛みをここまで見事に形あるものとして残してくれたのは、この「となりのトトロ」だけだからだ。
● 「森の精」(メリーランド州) 評価:★★★★★
子供時代の魔法のようなひとときを切り取り、映画の形で表現するという仕事を、これほど見事にやってのけるのは、宮崎駿以外には存在しないだろう。この素敵な「となりのトトロ」は、2人の少女が森の中で、不思議な驚くべき生き物に出会う話だ。込み入ったストーリーがあるわけではないが、真に愛すべき物語で、豪華なアニメーションがあり、奇妙な生き物(猫バス!)が登場し、完璧な結末で締めくくられる。
(ストーリー説明部分省略)
「となりのトトロ」はファンタジーであり、同時に日常の一部を描いた話だ。物語で描かれるのは、2人の元気な少女たちに起こる数日間の出来事に過ぎない。彼女たちが暮らすのは、不思議な出来事が起きる日本の田舎だ。物語の中盤まで目立った展開が無いにもかかわらず、それが全く気にならないのは宮崎の手腕によるものだろう。この映画を観るあなたは田舎の子供達の無垢さを大いに楽しみ、そして、作中の事件がただ無事に解決するのを見届けたいという気持ちになるはずだ。
そして、明るい色づかいで細部まで丁寧に書き込まれた絵は、なんでもない日常の一コマを鮮やかに浮かびあがらせてくれる。そして宮崎監督は、実在しそうなキャラクターと空想上のキャラクターを実にうまく交わらせてくれるのだ。 しかし、宮崎監督は、現実の暮らしには小さな問題が起きることも忘れてはいない。主人公の少女が、母親の病状が悪化したことを告げられるシーンがある。子供にとっては根源的かつ本物の恐怖だろう。
本作の登場人物は皆シンプルかつ好ましいキャラクターだ。大声で笑うような、陽気な個性を備えている。特にサツキは本当に存在していそうな少女だ。私が唯一理解できなかったキャラクターはキャップを被った少年だ。彼はシャイで少々問題を抱えているようだが、さほど掘り下げられる事なく終わってしまう。
「となりのトトロ」は、宮崎作品の中では明らかに子供向けではあるが、無垢な子供時代を完璧に描ききった心温まる魅力的な映画だ。それに加えて、フワフワしたニヤニヤ笑う大きなバスも登場するのだ!
● 「気持ちを高揚させてくれる素晴らしい映画」 評価:★★★★★
このアニメーションは2人の少女が森の精と出会うお話です。子供たちから信頼される幸せなお父さんの物語でもあります。 私はこの映画を13人の大人達のグループに見せた事があります。その中には、映画を分析しながら見るタイプの批評好きな人も含まれていたのですが、見終わると、彼らは目に涙を浮かべて私の所にやってきたものです。そして、この映画がどれほど素晴らしいか、話して聞かせてくれました。 この映画に登場するキャラクターたちは、本当にリアルなものに感じられますよ。子供達は実際に私が知っている子供たちのようで、たいていはしっかりしているのだけど、時として失敗をやらかしてくれます。そのおかげで、キャラクターたちが作り物である事は簡単に忘れられます。まるで実在するように思えてくるんです。
アニメーションも私の大好きなスタイルです。初期のディズニーアニメーションを思い出させる所があります。キャラクターが笑う時には非常に大きく口を開けますし、歩く時の歩幅も非常に大きく、オーバーアクション気味に行動します。
「となりのトトロ」は登場するキャラクターと一緒になって、見ているあなたも非常に悲しい気分にさせ、すごく幸せな気分にもさせてくれる、そんな映画です。
● 「この作品は本のようだ」(アメリカ ミシガン州) 評価:★★★★★
最初、私はこの映画を子供向けのカトゥーンだと思っていましたし、宮崎監督の以前の作品にも、さほど興味はありませんでした。授業での発表のために観ざるを得なかった映画なんです。ようやく、昨日観終えたのですが、この映画はほんとうに素晴らしかったですね。 この映画は、まるで書籍のように、読む人の気分や年齢に応じて、まるで感じ方が変わってしまう作品なんです。実は、私はこの作品を小学校の頃、すでに観ていました。とても可愛らしい映画で、実際にトトロに会いたいと思ったことを覚えています。 でも、今回観たときは、はるかに感動させられました。この作品には、いくつもの隠れたメッセージがあります。ただ、小さな子供にとっては、アイデンティティや環境などについてのメッセージを受け止めるのが少し難しかったのでしょう。
この作品には、他にも隠れたメッセージがあります。例えば、自然と共生することの重要性ですね。なんといっても、もし、あんな自然がなければ、あの姉妹はトトロに会えなかったわけですから。それから、先生のような存在でもある、あのお父さんですね。彼は夢を持つことの大事さと、眼に見えないものを信じることの大事さも教えてくれます。 私たちはテクノロジーに囲まれた世界で暮らしています。夢をみることよりも、テクノロジーこそが至上のものだと思いがちです。でも、このお父さんは「トトロなんて、この世にいないんだ。」とは決して言いません(悲しいことに、こんな事を言う大人はたくさんいますね)。むしろ、「会えたらいいね」と言ってくれます。他にも隠れたメッセージはたくさんあるでしょう。どの部分からどんなメッセージを受け取るかは、あなた次第ですよ!
● 「素晴らしいファンタジー」 評価:★★★★★
この映画は私の31歳の誕生日に注文したもので、大いに気に入ってますね。ヒロインは力強くてハッピーで、優しいキャラクターです。3歳になる私の娘もこの映画が大好きなのですが、彼女はハートで理解しているようですね。娘に見せるために、これ以上素敵な映画はちょっと思いつきません。ただ、「魔女の宅急便」だけは例外かな?
他のジブリ映画を見せるのは、彼女がもう少し大きくなるまでお預けにしています。待つだけの値打ちは十分にある作品ですからね。この「となりのトトロ」は誰にでもお薦めできる作品です。この映画の美しさは呆然とするほどのものですよ。
● 「世界最高のアニメーターによるもう一つの傑作」 (アメリカ シカゴ) 評価:★★★★★
私は20年近くの間、宮崎監督の大ファンだ。ただ、この「となりのトトロ」を観たのは、恥ずかしながら今回が初めてになる。信じてもらえないかもしれないが、その理由はこういう事だ。私は「トトロ」を最後の大切な宮崎映画だと考え、特別な機会に観ようと、とっておいたからだ。私は好きな映画は繰り返し観るのだが、やっぱり最初の鑑賞には格別の魅力があるものだからだ。
不幸なことに、「トトロ」を観てしまったことによって、私が鑑賞していない宮崎映画は、もう無くなってしまった。そして幸運な事に、「となりのトトロ」は十分に待った甲斐があるものだった。 この作品は、宮崎の最高の作品と言えるほどのものだろうか、と聞かれたら、答えるのは難しい。なんとか答えるとすれば、他の作品と比べて良いとも悪いとも言える、という答え方になってしまうだろう。宮崎の作品は、どれも秀逸なものだからだ。ただ、どの作品もムードや傾向によって、他の作品と区別することはできる。「となりのトトロ」は最も優しく、最も穏やかな映画と言えるかもしれない。
この作品には、「もののけ姫」や「風の谷のナウシカ」のような環境保護の啓示は存在しない。また、「千と千尋の神隠し」のように両親が豚に変えられてしまうこともない。「天空の城ラピュタ」のように、武器を使った戦いに巻き込まれることもない。「トトロ」に出てくる世界は端から端まで全て愛すべき場所で、ルイス・キャロルのチェシャーキャットとスクールバスの中間に位置するような、注目すべき生き物まで暮らしているのだ。
宮崎のアニメーションの力量は、彼だけがまさに別のリーグにいるかのようだ。私はかなり真剣にそう思う。ディズニーが今より野心的に絵を描いていた頃から、もう何十年も経ってしまった。宮崎はその頃のディズニーレベルの絵をたやすく描いてしまう。 例えば、姉妹が新しい家に引っ越してきた夜に襲ってきた突風のシーンだ。ディズニーは「バンビ」以来、こういう絵を描こうとしてこなかった。突風が木々の頂きに向かって吹き抜けていく様子、うっすらとモヤのかかるさま、草の上を波が走っていくように描かれる風の表現、そして強風にさらされ雨戸を閉めた家の描写、全てが注目に値する芸術性を備えている。それにもまして注目すべきなのは、宮崎がこのシーンで、強い嵐や激しい雷は必要ないと考えた、その熟達ぶりだ。むしろ、弱めの風と月明かりの空を描くことで、自然に対する畏怖を表現してみせた。
アニメーター、そしてストーリーテラーとして桁外れの能力を持つ宮崎ではあるが、実際、あらゆる能力のうち、彼の最も優れた能力は忍耐力なのかもしれない。これは日本のアニメーターたちが共通して持つものでもある。アメリカのアニメーション映画は、ほとんどが、活発な動きが画面いっぱいに広がる大騒ぎの事件になってしまいがちだ。そして、大急ぎで次のシーンに移ってしまう。 旅に例えるなら、アメリカのアニメーション映画は、どのように目的地にたどり着くかという事よりも、どこを目指すかといった事の方を、より重視しているように思えてしまう。こうなってしまう理由の一つは、アメリカの映画業界が観客を信頼していないからだ。ストーリーがどんどん進んで行かないと、小さな子供たちは退屈して落ち着きがなくなってしまうものだと恐れている。一方、宮崎は観客に敬意を払っている。ストーリーの進み方がゆっくりしているというだけの理由で、観客が席を立つことはないと自信を持っているのだ。 多くのアメリカ映画であれば、単に子供が部屋に入っていって何かを見つけるという場面でも、「となりのトトロ」なら、女の子が部屋に一歩入り、ドアの方から反対側の壁のほうを見つめ、もう一歩進んで部屋の中を見渡し、ゆっくり部屋の中に進んでいき、部屋の中で何かを見つける、といった感じになるはずだ。その結果として、映画のどの瞬間も不思議で素晴らしい発見がある。 「となりのトトロ」は特別な映画監督によって作られた、特別な映画だと言えるだろう。ただ、宮崎監督にとっては、「特別」が、ごく普通の事であるという点を考慮に入れなければ、だが。
(翻訳終わり)
また、ぼちぼちと他の作品レビューの翻訳もやっていきます。
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